2017年度第1回 エディテージ研究費 基礎研究グラントは、2017年7月~8月に公募を行い、全申請数42件、書類選考通過11件の中から、2017年10月27日(金)に採択者2名、奨励賞3名を以下の通り決定いたしました。

エディテージ研究費 基礎研究グラント

以下2名の研究者の方に、基礎研究グラント(50万円)が贈呈されます。

土肥 聡(どひ・さとし)さん
(昭和大学横浜市北部病院 産婦人科 助教)
分野
周産期医療、胎児診断、出生前診断、臨床遺伝
テーマ
CPP(冠動脈圧)及びrSO2(局所脳酸素飽和度)を用いた妊婦蘇生法における至適体位の検討

審査員より
妊娠中のお母さんが突然心肺停止になってしまったら…? そんな一刻を争う救急の現場で、より効果的な妊婦さんへの心肺蘇生方法を模索されています。

お腹の大きな妊婦さんを仰向けに寝かせると、下半身から心臓へ血液を戻す静脈が子宮で圧迫されるため、そのまま心臓マッサージをしても回復に繋がらないことがあると言います。ではどうすれば救命率が上がるのか…? 土肥さんのグループは心肺蘇生訓練に使われる医療用マネキンや、ブタを使ったオリジナルの妊婦モデルで妊婦さんにより適した心臓マッサージの体位を検討されています。

ご研究自体のインパクトの大きさに加え、産科と蘇生学の境界領域でエディターの理解がなかなか得にくい分野であること、最適な体位を検証し、アメリカ心臓協会の妊婦蘇生のガイドラインを書き換えたいという大きな目標も審査員の共感を集めました。


中山 達哉(なかやま・たつや)さん
(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部 主任研究員)
分野
微生物学
テーマ
食事摂取に起因するヒト薬剤耐性遺伝子保有に関する解析

審査員より
抗生物質などの抗菌薬に対して高い抵抗性を持つ細菌「薬剤耐性菌」に注目されています。

グローバル化の進んだ現在、海外に渡航して現地で蔓延中の細菌に感染し、自分でも気がつかないまま日本まで持ち帰ってしまうことは珍しくなくなっています。中山さんのグループがベトナムへの渡航者を対象に行った先行研究では、帰国者の約9割が、現地に多いある特定の大腸菌を持ち帰ってきたという結果も出ています(病原性の菌ではないため、保菌していても体に問題はないそうです)。

これらの菌株を分析して、抗菌薬への耐性を獲得させる遺伝子を持つものがいないかどうか確かめたいという中山さん。海外に渡航する誰もが耐性菌を運ぶ立場になりかねないその身近さと、先行プロジェクトの終了により分析できないままになっている菌株を活かしたいという堅実な研究計画も採択の決め手になりました。

エディテージ研究費 基礎研究グラント奨励賞

以下3名の研究者の方に、基礎研究グラント奨励賞(10万円)が贈呈されます。

黒岩 美幸(くろいわ・みゆき)さん
(東京医科大学 医学部看護学科 助教)
分野
ウィメンズヘルス、母性、女性、子ども
テーマ
子どもの体格指標の開発および母親の幼少期環境が子どもの身体的発育へ及ぼす影響

審査員より
生まれたばかりの赤ちゃんから学童期を直前に控えた5歳児までの成長を評価する「体格」指標づくりに取り組まれています。

現在の日本では身長・体重・胸囲・頭囲の4つの指標について別々に評価が行われますが、身長は伸びているのに体重はなかなか増えて来ない…など、各指標ごとに伸び方にばらつきがあり、わが子の成長ぶりは本当に標準的なのか、判断に迷われるお父さんお母さんも少なくないと言います。黒岩さんのグループは身長・体重・胸囲・頭囲の4つの測定値を総合的に捉える「体格」指標によって、より的確で合理的な成長評価を目指されています。

ご自身も小さなお子さんを抱えたお母さんとして、助産師さんとして、子どもの成長を心配するご両親を安心させたい。優しいまなざしがとても印象的でした。


善方 文太郎(ぜんぽう・ぶんたろう)さん
(大阪医科大学 医学部生命科学講座生理学教室 助教)
分野
神経生理学
テーマ
速筋・遅筋特異的アセチルコリン受容体の機能解析

審査員より
筋肉が運動神経から指令を受ける、神経伝達物質の受容体に注目されています。

運動をつかさどる筋肉には、速い運動が得意で疲れやすい「速筋」と、ゆっくりした持続的な運動が得意で疲れにくい「遅筋」があります。体を動かそうとするとき、脳からの指示はまず運動神経に伝わります。脳の指令を受けた運動神経は筋肉と接合している部分から伝達物質「アセチルコリン」を放出し、その物質が筋肉の持つ受容体に結合することで筋肉が収縮、運動が起こります。

善方さんはこれまでに、速筋と遅筋でアセチルコリン受容体の構造が異なっていることを発見され、現在はその構造の違いが持つ意味の解明を目指されています。遺伝子操作と実際の動物の運動観察というミクロとマクロの実験を両立させた研究手法が面白く、高校生などへのアウトリーチに注力されていることにも感銘を受けました。


佃 麻美(つくだ・あさみ)さん
(京都大学大学院 人間・環境学研究科 博士後期課程)
分野
文化人類学
テーマ
アンデスにおける人間=動物関係からみた現代的牧畜の生活様式の解明

審査員より
南米、ペルーのアンデス高地で牧畜生活を営む人たちの生活様式に注目されています。

アンデスの人々は標高4800メートルの高地でアルパカやヒツジなどの家畜を放牧し、毛や肉、時には家畜自体を売って生計を立てています。佃さんは現地のアルパカ飼いの方の放牧に同行し、人と動物がどんな関係を築いてきたか、各動物が社会的・経済的・文化的にどのような意味を持つのかを明らかにしようとされています。

若い世代では放牧地での家畜の世話をほとんどしていない人もいるなど、近代化しつつあるアンデス牧畜が今後どうなっていくのか、それに伴って人と動物の関係がどう変わるのかを見ることは、現代の産業社会を生きる我々にも動物との付き合い方を見直す契機を与えてくれるように思えます。お一人で現地社会に飛び込み、調査を続けて来られたバイタリティも評価のポイントになりました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です