高齢者の”ひとり”と”孤立”は違う?:豊島彩(とよしま・あや)さんメールインタビュー

高齢期における“おひとりさま”ライフスタイルの把握と
社会的孤立との違い

日本の高齢化が進んでいます。総務省統計局の発表では、平成28年の時点で65歳以上の人は全人口のおよそ27%、更にその約半分が75歳以上のいわゆる後期高齢者の方々でした。親や自分の老後をどう過ごさせ、どう過ごすべきなのかは今や、誰にとっても避けて通れない問題です。

しかし、これほど高齢化が進行している今になっても、特に若い世代にとっては年を取ることのイメージ自体がわきづらく、体の衰え、認知症、孤独といった、ネガティブな言葉と共に語られることも少なくありません。独り暮らしのお年寄りと聞けば、寂しくないように訪ねてあげなければ、様子に気をつけてあげなければと思うことはあっても、独りが良いんだな、そっとしておいてあげよう、とはあまり思わないのではないでしょうか?

エディテージ・エッジグラントメンバー、豊島彩(とよしま・あや)さんは、積極的に社会参加をしていない、独りで過ごしているお年寄りの生活を調査して、本当に孤独を感じていて支援が必要な方なのか、おひとりでの趣味や思索の時間を豊かに楽しまれている“独りが幸せ”な方なのかを見極めようとされています。

ご研究について

Q1. ご研究の内容について、一般の方向けに簡単にご紹介ください。

近年では,“孤独のすすめ”や“極上の孤独”といった書籍がベストセラーになるなど,一人の時間を重視する老後のライフスタイルに注目が集まっています。一方で,高齢者の一人暮らしや高齢者夫婦のみの世帯は,社会的に孤立してしまうリスクが高く,家族や周囲の住民もあまり外に出てこない高齢者がいると心配になってしまいます。

最新の研究では,高齢になると自分の趣味を一人で楽しむ傾向が若い世代より強いことが分かってきました。今後,高齢になり家族や友人との交流が少なくても心豊かに生活できるのか明らかにすることで,日本の超高齢社会に貢献できるのではないかと考えています。

現状として,“おひとりさま”という言葉が社会で広まっていますが,実際にその方たちがどのような生活をしているのかはまだ曖昧です。そこで,まずは高齢者の中でも社会参加に消極的な方のライフスタイルを把握し,孤独に陥っている人との違いを比較しようと考えました。

Q2. このテーマを選んだきっかけ、この研究を始めようと考えた理由を教えてください。

はじめは,孤独を感じている高齢者の方の支援について興味があり,大学院では孤独感や社会的支援について調査やインタビューをしてきました。地方自治体や研究機関により孤立防止のプログラムが数多く実施されているなか,一部の高齢者は参加に消極的であるという問題が常にあることに気づき,現在のテーマの着想を得ました。

また,個人的な話ですが,夫婦だけで暮らしている自分の祖父母に社会参加を促した時に“そもそもそのような考えがないから”ときっぱり言われてしまい,社会参加を勧めるだけでは限界があるなと感じたことも大きなきっかけです。

※調査を受けられた方のご同意を得て掲載しています。

Q3. このテーマのユニークなところ、面白いところなどPRポイントを教えてください。

一人暮らしであるか,人と交流があるかといった客観的指標で判断されてきた社会的孤立の問題に,個人がそれに満足しているのかといった心理状態を反映した点が特色だと思います。また,若い世代でも未婚の方や子どもがいない方が増えていますので,高齢者に限らず若い世代が将来を考えるきっかけになるテーマである点が面白いと感じます。

Q4. この研究の難しいところ、特にご苦労されていることを教えてください。

一人の時間を楽しむという現象が非常に捉えにくく,実験やアンケート調査だけでなく,インタビューや文献研究などの様々な方法を用いる必要があるので,まだまだ勉強が必要だなと思います。

また“社会的孤立”や“孤独”というネガティブなワードが多いため,研究内容を誤解されやすく申請書の書き方にいつも苦労しています。最近は“おひとりさま”という言葉を使う様にしたせいか,興味を持ってくれる人が徐々に増えてきました。

Q5. 直近1年程度の、ご研究計画について教えてください。

幸いにも今年度から助成金を獲得することができ,現在調査の準備をしています。

Q6. 英語論文の投稿や、国際学会での発表のご予定はありますか?

論文を投稿し、学会でも発表する予定

Q7. もっと知りたい方向けに、ご自分のホームページ、論文のダウンロードリンクなどがもしあればご紹介ください。

研究室HP http://rinro.hus.osaka-u.ac.jp/
個人HP https://researchmap.jp/ayat.ou/

あなたご自身について

Q8. 研究者になりたいと最初に思ったのはいつでしたか?

中学校・高校

Q9. 研究者になりたいと思ったきっかけを教えてください。

親戚に研究者がいたので,学会や研究活動で世界を飛び回っているのを見てそうなりたいなと漠然と思っていました。大学院修士課程に入学して実際に研究をするようになってから,明確に研究者になろうと強く思いました。

Q10. ご自身の研究者としての「強み」は何だと思いますか? また研究者としての弱みはありますか?

まず弱みとしては体力のなさです。研究者は時には早朝から深夜遅くまで作業をすることが求められますが,私はしっかり寝ないと集中力が切れてミスが非常に多くなります。

しかし,事前にやらなければいけないことや自分がやりたいことを意識し,余裕がある時に少しずつ進めていくことで体力のなさをカバーしてきました。なので,コツコツ研究を続けられるのが私の強みだと思います。

また,温かく支えてくれる周囲の人たちがいる現在の恵まれた環境も強みだと思います。その人たちに恩を返すためにも,次のチャンスを掴めるよう日ごろコツコツ研究に励むようにしています。

最後に

Q11. このサイトをご覧になる若手研究者、研究者を目指す学生さんへメッセージをお願いします。

研究はいくつになっても夢や目標を追い続けられる魅力的なものだと思います。研究を続けることは辛いこともたくさんありますが,必ず誰かが見ていてくれていますので頑張ってください。

よかったらシェアしてね!

この記事を書いた人

エディテージはカクタス・コミュニケーションズが運営するサービスブランドです。学術論文校正・校閲、学術翻訳、論文投稿支援、テープ起こし・ナレーションといった全方位的な出版支援ソリューションを提供しています。

目次