2018年度 エディテージ研究費 採択者

2018年度のエディテージ研究費では、研究経験がより浅い「大学院生スタートアップグラント」を新設し、科研費への応募資格を未だお持ちでない方でも、本グラントで研究を開始できるようになりました。

また、基礎研究グラントの申請資格や支給金額も拡大し、「より多くの方に、より研究の実情に合った研究資金」を提供することを目標とした募集・審査を行っています。

基礎研究グラント(年1回)

2018年度 エディテージ研究費 基礎研究グラントは、2018年7月~9月に公募を行い、全申請数76件、書類選考通過11件の中から、採択者4名を以下の通り決定いたしました。

第1位:研究助成金 100万円

飯田 渓太(いいだ・けいた)さん
(東京大学生産技術研究所 定量生物学研究室 特任助教)
分野
数理物理、数理生物学
テーマ
確率・統計を用いた1細胞遺伝子発現の数理解析と生物学的パラメータの推定

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第2位:研究助成金 50万円

出野 智史(いでの・さとし)さん
(慶応義塾大学 医学部麻酔学教室 助教(研究奨励)/北里大学北里生命科学研究所 和漢薬物学研究室 講座研究員)
分野
麻酔学、東洋医学、周術期医療
テーマ
術後肺炎予防を主眼とした漢方製剤による免疫補助療法の確立
採択者メッセージ
この度は基礎研究グラントに採択いただき、ありがとうございます。私は、これまで経験に基づいた使用法が中心であった漢方医学の有用性を基礎医学的な手法により実証し、西洋医学が主体の急性期医療への応用を目指しています。本研究では手術後に生じる肺炎を再現した病態モデルマウスを用い、漢方薬の感染制御効果を検証しています。漢方製剤の術後肺炎に対する予防効果とその作用機序が明らかとなれば、新たな感染制御戦略を開発できる可能性があります。我が国独自の漢方医学的アプローチを取り入れて、周術期医療を担う麻酔科学の発展に貢献できれば幸いに存じます。

第3位:研究助成金 30万円

ARBANA BAROLLI(バロリ・アルバナ)さん
(新潟大学 大学院現代社会文化研究化 博士研究員)
分野
地域研究、芸術学
テーマ
アルバニアにおける日本アニメーションの浸透過程
-社会主義時代から現在にかけて-
採択者メッセージ
2018年度エディテージ研究費基礎研究グラントに選んでいただき、誠にありがとうございました。現在、「アルバニアにおける日本アニメーションの浸透過程-社会主義時代から現在にかけて-」特にアルバニアが社会主義を脱する過程における、メディアとその中の日本アニメーションの様相について研究に取り組んでおります。社会主義政権が長く存在したアルバニアにおいては、他のヨーロッパ諸国と比較しても日本文化に関する知識・理解は独特なものとなっています。本研究で取り扱うような文化に関する学術的研究はないため、パイオニアの位置づけにあると確信してます。エディテージ研究費基礎研究グラントの支援を頂き、両国の歴史的にも文化的にも有意義な研究を完成させたいと考えております。

第4位:研究助成金 20万円

新間 秀一(しんま・しゅういち)さん
(大阪大学大学院工学研究科 准教授)
分野
分析化学
テーマ
イメージング質量分析を用いた農薬−昆虫コミュニケーション解析
採択者メッセージ
この度は基礎研究グラントに採択いただき、誠にありがとうございます。申請内容は、昆虫体内での農薬の分布と農薬摂取による生体内代謝物変化の可視化でした。いずれも「観る」ためには画期的な技術が必要となります。この問題を解決するために、私が開発に携わったイメージング質量顕微鏡を用いています。現在は、ショウジョウバエを用いた実験を進めていますが、将来、ミツバチを用いることで現在世界的な問題となっているミツバチの大量失踪について、行動学ではなく分析科学的アプローチで解明したいと考えています。解決するべき問題は山積みですが、共同研究者とともに乗り越え、ハイインパクトの成果を出したいと考えております。

大学院生スタートアップグラント(年1回)

大学院生スタートアップグラントは、「科研費の応募資格がなくても、研究を始めたい、続けたい」そんなご要望にお応えして、2018年度に新設されました。

第1回となる今回は、大学院生の方、博士号の取得から2年以内の方を対象として公募を行い、全申請数68件の中から、採択者1名、次点2名を以下の通り決定いたしました。

大学院生スタートアップグラント(50万円)

加瀬 義高(かせ・よしたか)さん
(慶応義塾大学 医学部生理学教室 助教)
分野
神経科学
テーマ
内在性成体神経幹細胞/前駆細胞賦活化(若返り)による神経再生医療

同・次点(25万円)

大崎 晴菜(おおさき・はるな)さん
(弘前大学 農学生命科学研究科農学生命科学専攻 修士課程)
分野
生態学
テーマ
植物同士の多様な関係がつくりだす植食性昆虫の生息場所
採択者メッセージ
この度は採択いただき誠にありがとうございます。私は「植物同士の多様な関係がつくりだす植食性昆虫の生息場所」というテーマのもと、植物や昆虫を対象とした生態学研究に取り組んでいます。動物が餌とする植物の決定機構は、長らく生態学上の重要な課題とされてきました。私は植物同士の相互作用に着目し、昆虫の餌場の決定機構の解明に取り組んでいます。現在は御社の援助のもと、栽培実験や葉の成分分析などによる検証を進めており、植物主体的な観点からも昆虫の分布や共存を考えていく重要性について指摘できると考えております。さらには農業分野への応用も視野にいれ、社会に貢献できるよう今後とも研究に精進して参りたいと思います。


南條 啓孝(なんじょう・よしのり)さん
(総合研究大学院大学 生命科学研究科生理科学専攻)
分野
神経科学・認知科学
テーマ
二者の関係性と合意の神経基盤の関連:二者同時記録MRIによる研究
採択者メッセージ
この度はエディテージ研究費大学院生スタートアップグラントに採択頂いたこと、感謝申し上げます。私はヒトの社会性に関わる行動・脳機能を研究しています。現代社会は、通信技術等の発展が相次ぐこともあり、直接的な人と人との関わりが希薄になっているといわれています。複雑な現代社会だからこそ、ヒトの社会性に関わる行動や脳機能をの研究は、重要な役割を担っていると考えられます。今後、学術的・社会的に貢献できるよう、研究に着手していきたいと思っております。また、研究活動を始めた段階の学生にとって、「大学院生スタートアップグラント」に採択頂いたことは、大変有難く思いました。

英文校正グラント(月1回)

以下の研究者の方に、エディテージの論文校正サービス 5万円分が贈呈されました。

2019年1月

阿部 博和さん
岩手医科大学 教養教育センター
生物学科 助教
分野
海洋生態学・系統分類学
研究テーマ
遺伝子解析であばき出す海産多毛類「イワムシ」に潜む隠蔽種の存在
採択者メッセージ
「イワムシ」は,日本各地の干潟や岩礁域に生息している多毛類(ゴカイ類)で,釣りのエサとしてもよく利用されています。私は,日本各地で採集した「イワムシ」の遺伝子解析を行い,「イワムシ」に含まれる5種の隠蔽種の存在を明らかにしました。中には,釣りエサの輸入やカキ種苗の輸出とともに国内に移入,または国外に移出した可能性が懸念され,外来種問題の観点から注目すべき種も含まれていました。今後は,隠蔽種5種の分類学的検討や外来種疑惑の真相究明に取り組んでいく必要があると感じています。この度は,地道で基礎的な分類学的研究の重要性を評価していただき,大変嬉しく思います。これからも,まるで謎解きパズルのような多毛類分類のピースをひとつずつ繋げていきたいと思います。


高橋 利幸さん
都城工業高等専門学校 物質工学科 准教授
分野
細胞生物学、環境農学、生化学、生物物理学
研究テーマ
紫外線吸収剤などの化学成分が動物細胞と藻類共生系に及ぼす影響の細胞・分子メカニズムに関する研究
採択者メッセージ
この度は、沢山の応募の中から、我々の申請を英文校正グラントに採択して頂き誠にありがとうございます。
私たちは、特定の生物が他の生物と共存・共生する生存戦略を研究テーマの中心にとらえ、その基礎研究及びそれらのメカニズムを人工的に活用した応用システムの開発を目指しております。本テーマは学術的には生物進化と関りがあり、また、応用的には環境問題の指標ともなっています。特に今回の申請は、環境問題と関わる技術の開発についての内容です。
所属機関からの基盤研究経費が削減されるなかで、このような機会は大変ありがたいです。これを弾みに、今後とも研究の進展及び研究成果の公表に励んでいく所存です。


2018年12月

原 裕貴さん
山口大学 理学部 助教
分野
細胞生物学
研究テーマ
細胞核サイズの制御
採択者メッセージ
この度は英文校正グラントに採択いただき誠にありがとうございました。
真核細胞生物は遺伝情報であるDNAを内包する細胞核をもっています。しかし、細胞核のサイズ(大きさ)は一定ではなく、発生や分化の過程、細胞分裂の間、 さらには異なる生物種の間で大きく異なります。この核のサイズを適切に制御することは細胞にとって非常に重要ですが、その仕組みの大部分は未知のままです。我々は2015年より研究室を立ち上げ、この制御機構の解明に日夜取り組んでおります。本グラントを使って作成する論文が、我々の研究室からの初めての研究論文となることを期待しております。


野口 泰司さん
名古屋市立大学大学院 医学研究科公衆衛生学分野 博士課程
分野
疫学・公衆衛生学
研究テーマ
家族介護者の精神的健康を保護する社会的要因の検討
採択者メッセージ
この度は、英文校正グラントに採択いただき、感謝申し上げます。私は現在、健康長寿社会・地域包括ケアの推進を目指して、高齢者や家族介護者への健康、支援についての社会疫学的な研究を行っております。私は大学院生のため使用できる研究費が限られる中、本グラントに採択いただけて、大変ありがたく思います。
今後もより一層、本分野の発展に貢献できるように精進して参ります。


2018年11月

平井 健士さん
名古屋大学
情報学研究科
博士後期課程
分野
情報ネットワーク
研究テーマ
車車間・歩車間(V2X)通信を用いた衝突警告アプリケーションにおける通信品質向上のための適応的な中継方式
採択者メッセージ
この度は、英文校正グラントにご採択いただき誠にありがとうございます。これを弾みに、今後とも研究に励んでいく所存です。
私の研究内容は、安全安心な道路交通のための「車となにか(車や歩行者)の通信」を利用した衝突事故警告システムにおける通信品質評価・高品質化です。特に着目しているのは、車や歩行者がたくさん存在し、無線通信帯域が混雑するケースでの通信の高品質化です。この課題は、本システムの導入時に必ず直面する重要な課題と考えており、この課題に取り組むことにより、通信の専門家としての立場から、衝突事故警告システムの実現に貢献できればと思っております。


阿部 亮子さん
同志社大学
研究開発推進機構
特任助教
分野
安全保障学
研究テーマ
アメリカの安全保障
採択者メッセージ
この度は、エディテージ英文校正グラントに採択頂き、大変感謝しております。私の研究は、アメリカの安全保障、とりわけ、ベトナム戦争終結後以降に米国の軍隊の行動原理がどのように変容し、それがアメリカの介入政策に与えた影響について考察しています。今回の研究では、1980年代後半から1990年代前半に米国海兵隊が軍備力整備の方法論を大きく転換した過程を解明しました。軍事を学術的に研究することで、日本の社会に軍事に関する知見を提供すること、他方、英語で発表することで、より多くの人に研究成果を提供したいと思い、研究を進めています。英文校正グラントに採択して頂き、大変助かりました。ありがとうございます。


2018年10月

鈴木 啓太さん
茨城県立医療大学 保健医療学部
人間科学センター 嘱託助手
分野
スポーツ医学
研究テーマ
大学ラグビー選手の脳振盪発生に関わる危険因子の特定
採択者メッセージ
この度は英文校正グラントに採択いただき感謝申し上げます。
研究テーマは、「ラグビーにおける脳振盪の予防」です。近年、スポーツにおける脳振盪に注目が集まっています。特に、脳振盪を繰り返すことによって、若年性アルツハイマー病などが発症する可能性が高まることも報告されています。しかし、脳振盪の発生予防に対する取り組みは一定の効果が立証されておらず、未だ継続的な課題です。そのため、私は脳振盪発生の予防策を確立することを長期的な目標として、現在研究に取り組んでおります。
スポーツ医学に関わる人間として、研究と現場を繋ぎ、多くの人が安全に楽しくスポーツができるように貢献していきたいと考えております。


2018年9月

伊藤 健彦さん
玉川大学 ELFセンター
兼任講師
分野
社会心理学
研究テーマ
日本人の英語コミュニケーション態度の社会生態学的考察
採択者メッセージ
この度は英文校正グラントに採択いただき、誠にありがとうございます。貴社のサービスを受けた英語論文はすでに2本採択され、さらにプリンストン大学大学院に交換留学するための英文書類の校正の際もお世話になりました。
現在、日本人の英語コミュニケーション態度について社会生態学の観点から検討しています。先行研究では、態度を規定するものとして自信や価値といった個人内要因が検討されてきましたが、これらの要因がどこから生まれるのかが明らかではありませんでした。本研究では、対人関係や集団の選択の自由度を表す関係流動性の観点を取り入れ、個人を超えた社会の影響を明らかにしていきます。今回のグラントを使って、インパクトのある成果を世に送り出せたら嬉しく思います。


田宗 秀隆さん
東京大学大学院 医学系研究科
神経細胞生物学分野 博士課程
分野
精神医学
研究テーマ
セフェピム脳症における特徴的脳波の in silico simulation
採択者メッセージ
英文校正グラントに採択いただき誠にありがとうございます。
今回、精神科医として経験した抗菌薬関連脳症(セフェピム脳症)の脳波に関して、コンピュータ・シミュレーションを行いました。数式の記載など、素人では正誤の判断すらできない点もみていただけるため助かりました。
現在は基礎系の大学院生として、ウェットな実験に携わっております。22q11.2欠失症候群やてんかんなど、器質的疾患を合併する精神症状に興味を持っており、いずれは基礎と臨床をつなぐ研究をしたいと考えております。
今までのキャリアと異なる分野に進むとグラントに不自由するため、使途制限が緩いものはありがたいです。研究発表の同意をくださる患者さん・ご家族のためにも、今後の診療の一助となる研究を心がけていきたいです。


2018年8月

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篠原 智行さん
高崎健康福祉大学 保健医療学部
理学療法学科 講師
分野
基礎理学療法・介護予防
研究テーマ
入院患者における、入院時状態と日常生活動作能力の低下内容との関連性の検証
採択者メッセージ
この度は英文校正グラントに採択を頂き、誠にありがとうございました。
理学療法士として病院勤務を続け、数年前に大学教員に転向しました。研究、論文執筆が思い通りにいかないながらも研究を続けています。そんな中、エディテージ様の英文校正では毎回丁寧に対応して頂き、助けられています。勇気づけられるコメントを頂くこともあります(笑)
現在は、高齢者の生活機能やバランス機能の低下を予防するための取り組みを進めています。本研究は、入院で生じる生活機能低下のリスクの捉え方に着目したものです。多くの方がその人らしく生活するための知見を、微力でも提供できればという思いで、研究を続けていきたいと思います。


柿沼 陽平さん
帝京大学 文学部史学科
准教授
分野
中国史
研究テーマ
中国古代・中世貨幣経済史研究


2018年7月

佐藤 遊洋さん
旭川医科大学 社会医学講座
公衆衛生学・疫学分野 助教
分野
疫学・公衆衛生学
研究テーマ
仕事のストレスによって、歯を失うリスクは高まるのか?職業性ストレスと歯の喪失の関連を明らかにした研究
採択者メッセージ
この度はエディテージ英文校正グラントに採択頂きましたこと、感謝申し上げます。私は今年4月より、旭川医科大学の社会医学講座に助教として赴任させて頂きました。私は働く方々の歯の健康に影響を与える要因を調査しております。今回の研究では「仕事のストレス」に注目をし、仕事のストレスと歯の喪失の関連を明らかにする論文を作成していました。しかし、私は去年まで大学院生であり、使用できる研究費がない状態で困っていましたので、英文校正グラントに採択頂けたことは大変助かりました。今後もより一層、働く方々の歯の健康の増進に寄与できるように精進して参ります。


椎名 由美さん
聖路加国際病院 心血管センター 循環器内科
医幹・臨床准教授
分野
循環器内科・成人先天性心疾患
研究テーマ
心臓MRI T1mapping法を用いた成人先天性心疾患における心筋障害評価と心血管イベントとの関係
採択者メッセージ
私の研究領域は、循環器疾患の中でも比較的新しい分野である成人先天性心疾患でして、画像診断を中心に研究しております。生まれつき心臓病を持った子供たちの約90%が、手術や薬剤の進歩により、成人期に到達できる時代となり、大変喜ばしいことであるのと同時に、術後遠隔期にさまざまな問題が生じており、今後も更なる研究が必要な分野です。
産休・育休中も論文の校正をエディテージにお願いし、丁寧にくりかえしアドバイス頂きました。育休明けの研究に対し、さらに研究費を助成して頂き大変励みになります。大変ありがとうございました。