2016年度 エディテージ研究費 採択者

2016年に公募を行った第1回エディテージ研究費の採択者が2017年3月に決定しました。研究費の選考を通じて、エディテージ・エッジの研究費選考委員会スタッフも、強い問題意識を持ち、アイディアにあふれ、独自の研究キャリアを模索する若手研究者の方々から多くのパワーをいただきました。採択された皆さま、本当におめでとうございました。

エディテージ研究費 基礎研究グラント

以下の2名の研究者の方に、50万円の基礎研究グラントが贈呈されました。

田中 憲子(たなか・のりこ)さん
(名古屋大学総合保健体育科学センター 准教授)
分野
運動生理学、健康科学
研究テーマ
体幹部骨格筋の定量化

選考委員会のコメント
体幹部骨格筋の定量化という、健康・社会的意義が大きいが研究上労力がかかるテーマに大学院時代から地道に取り組まれています。女性研究者としての様々な苦労を経験しながらも諦めずに研究を続けてきた情熱的な人柄に強く惹きつけられました。体育学という研究費の選択肢が少ない分野的ハンデに加え、研究所でのアルバイトや企業研究者という科研費に申請できない立場での研究生活を長く続けてこられたにも関わらず地道に論文投稿など研究業績を積み上げられています。研究者としてのポテンシャルの高さに加え、スポーツインストラクターとしての一面や、女性研究者としての生き方のモデルとして、非常に印象に強く残りました。

>> 田中さんのインタビューはこちらから。


衛藤 彬史(えとう・あきふみ)さん
(神戸大学農学研究科地域連携推進室
農村イノベーションラボ 学術研究員)
分野
社会科学(公共政策学、農村計画学)
研究テーマ
交通空白地問題におけるコ・ガバナンスの形成過程

選考委員会のコメント
山間部で実際に生活する中で過疎地高齢者の交通空白という身近でありながら解決が困難な社会問題に目を向けています。研究者である衛藤さん自身も直接コミュニティに入り混み、働きかけながら地域住民が問題解決をしていく過程を研究するユニークな手法で、新しい農村計画研究の研究方法論を切り開いている点が極めて新鮮でした。分野がまだ定義されておらず研究手法が新しく先行研究がないテーマは科研費を取りづらい現状がありますが、衛藤さんは重要性と意義を信じ、難しさにあえて果敢に挑戦しています。社会実現と理論研究の境界を設けず、研究者としての新しい生き方を模索しているところに未来を感じました。

>> 衛藤さんのインタビューはこちらから。

エディテージ研究費 論文投稿支援グラント

以下の3名の研究者の方に、10万円分の論文投稿支援グラント(10万円分のエディテージ論文投稿支援、英文校正、翻訳サービス利用無償化)が贈呈されました。

大澤 傑(おおさわ・すぐる)さん
(防衛大学校総合安全保障研究科 特別研究員)
分野
比較政治(独裁国家)、政軍関係
研究テーマ
独裁の誕生・持続・崩壊ー政軍関係に注目した比較研究ー

選考委員会のコメント
緊迫する北朝鮮情勢ですが、私たちは北朝鮮の政治について極めて限られた情報で物事を判断せざるを得ません。大澤さんはこの北朝鮮という問題意識に、過去に崩壊した独裁国家の誕生・持続・崩壊の過程を理論化することによって立ち向かおうとしています。防衛大学校という科研費に申請できない特殊な研究環境に在籍されていることも選考の決め手となりました。NGOスタッフとしてフィリピン紛争地域での平和構築の現場や国会議員秘書、自治体職員などの社会経験を経て研究職に戻った大澤さん。現場経験を生かし、実際に旧独裁国家でフィールドワークを行い自らの足でデータ収集をして理論研究に落とし込むスタイルが新鮮でした。

>> 大澤さんのインタビューはこちらから。


奴久妻 駿介(ぬくづま・しゅんすけ)さん
(一橋大学 社会学研究科 博士後期課程)
分野
多文化教育
研究テーマ
外国人児童生徒に対する日本語ボランティア教室の役割

選考委員会のコメント
日本に住む外国人の子ども達は義務教育の対象になっておらずサポートのための制度が整っていない状況で、外国人家族のケアの受け皿として機能している地域の日本語ボランティア教室に着目しています。外国人労働者の子ども達の不就学・不登校の問題は見過ごされがちですが、今後深刻化していく可能性が高い古くて新しい課題です。今後日本在住外国人や難民がますます増えていくことが予想される中で非常に重要なテーマにチャレンジしています。奴久妻さんは積極的に海外で研究発表をされていて、今回の研究でも研究成果の国際発信の重要性を語られていたこともまた選考のポイントになりました。

>>奴久妻さんのインタビューはこちらから。


清原 康介(きよはら・こうすけ)さん
(東京女子医科大学医学部衛生学
公衆衛生学第二講座 助教)
分野
疫学
研究テーマ
運動中の心臓突然死予防に向けた疫学研究

選考委員会のコメント
運動・スポーツ中に発生する心臓突然死の原因と予後に影響する要因をビッグデータから分析するというテーマは、成果が広く社会に役立つ研究だと感じました。スポーツ中の心臓突然死に絞り込まれた切り口が新しく、疫学研究は分野的に科研費が取りづらい中、自らの人脈を利用して自治体や病院のデータベースと連携し、工夫しながら大規模な研究を行い成果を出してきたという清原さんの地道な研究活動に感銘を受けました。

>>清原さんのインタビューはこちらから。

エディテージ研究費 英文校正グラント

以下5名の方に、英文校正グラント(5万円分のエディテージ英文校正費用無償化)が贈呈されました。

市川 周平(いちかわ・しゅうへい)さん
(三重大学大学院 医学系研究科 地域医療学講座)

雨宮 薫(あめみや・かおる)さん
(情報通信研究機構 脳情報通信融合研究室)

三浦 政司(みうら・まさし)さん
(鳥取大学 工学研究科 機械宇宙工学専攻)

中島 若巳(なかじま・ふかみ)さん
(東京医科大学 医学部 医学科)

匿名希望の方を1名含む