子どもの体格指標の開発および
母親の幼少期環境が子どもの身体的発育へ及ぼす影響

生まれたての赤ちゃんの頃から学童期まで、何度も受ける身体測定。お子さんを連れて保健所や小児科で検診を受けたり、ご自分自身が、保育園や幼稚園で身長、体重をはかったことを覚えているという方もいらっしゃるかもしれません。

乳幼児の身体測定では、身長、体重、胸囲、頭囲をそれぞれ測定します。計測データは10年ごとに厚生労働省が発表している『乳幼児身体発育調査結果』と比較して、同じ性別、同じ月(年)齢の子どもたちと比べてその子がどれくらい成長しているかを評価しています。「この子は同じ月例の男の子の中では身長は高い方だけど、体重はあまり増えていないね」というような具合で、同性、同月(年)齢の子の中であまりに大きすぎたり、小さすぎたりした場合には詳しい検査や、治療を勧められることもあります。身長と体重についてはそれぞれ個別に評価するだけでなく、両者のバランスも見て、やせすぎ、太りすぎでないことを確認しています。乳幼児の成長には個人差が大きく、急に成長する時期があったり、良く動く子だと体重が増えにくかったりもするため、1回の結果で思い悩む必要はないことも多いのですが、平均から離れていれば子どもの健康や、自分の育て方などに不安を感じると仰る方も多くいらっしゃいます。

2017年第1回基礎研究グラント 奨励賞を受賞された黒岩美幸(くろいわ・みゆき)さんは、現在別々に測定、評価されている身長、体重、胸囲、頭囲のデータを総合的に評価する「体格」指標の作成に取り組まれています。総合的な指標が出来れば、個々の数字の伸びにばらつきがあったとしても、全体として問題なく育っているかを評価できます。また、子どもの成長発達には親の養育態度が影響を与えているという研究もあるため、親の養育態度、更には親に対するその親(子どもの祖父母)の養育態度に遡り、子どもの体格指標との相関を調査されています。

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ご研究について

Q1. ご研究の内容について、一般の方向けに簡単にご紹介ください。

今日我が国では新生児・乳幼児の成長評価は身長、体重、胸囲、頭囲それぞれに測定し、それぞれに評価しています。しかし、私たちは、この身長、体重、胸囲、頭位をそれぞれ別々に評価するのではなく4つの値から1つの指標となる「体格」指標を作成することに成功しました(身長、体重、頭位の3つからも指標の作成は可能です)。しかし、現在まで作成できたのは、出生時と生後1か月時の児の「体格」指標のみであり、今後、その後の乳児・幼児の「体格」指標の作成を行いたいと考えています。

また、子どもの成長発達は、親の養育態度に左右されるという研究もあります。そして、親の養育態度はその親が育ってきた養育環境から影響を受けるという研究もあります。そこで今回は、親が育ってきた養育環境を知るPBI(Parental Bonding Instrument) と現在母親がとっている養育態度、そして「体格」指標との関連性を評価しようと考えました。

Q2. このテーマを選んだきっかけ、この研究を始めようと考えた理由を教えてください。

新生児、1か月児の「体格」指標の作成が成功したころは、まだ私は独身で子どももいない頃でした。いつか、その後、成長していく子どもたちの「体格」を乳幼児まで追っていきたいと考えていました。そして現在、子どもを二人産み、この研究が自らの生活と身近なものとなりました。子どもの成長発達は親の影響が大きいということもあり、今回、「体格」指標だけでなく、親の育ってきた養育環境と親が実際にとっている養育態度と子どもの「体格」の関連性も知りたいと考えこの研究をはじめました。

Q3. このテーマのユニークなところ、面白いところなどPRポイントを教えてください。

今まで別々に評価していた身長、体重、胸囲、頭位を使用して一つの指標を作成できるのかというところが面白いと思っています。

Q4. 研究費を得るのにご苦労された事情について教えてください。

2度妊娠・出産を経験しました。その時感じたことは妊娠・出産をしながら研究費を獲得することは難しいということです。次年度や先の見通しが立たず、助成金の応募もできない状態でした。仕事復帰をした時、研究費がなく困りました。今回、仕事復帰をした年にこのように助成金をいただき、研究できる機会をいただけたことに本当に感謝しております。

Q5. 採択決定後、ご研究は開始されましたか?

  • 開始し、進行中

Q6. ご研究の今後の発展、見通しについて教えてください。

倫理委員会で苦戦しております。今後どのように研究を進めていくか研究協力者と話し合っている最中です。

Q7. 英語論文の投稿や、国際学会での発表のご予定はありますか?

  • 論文を投稿し、学会で発表する予定

あなたご自身について

Q8. 研究者になりたいと最初に思ったのはいつでしたか?

  • 大学院(修士)

Q9. 研究者になりたいと思ったきっかけを教えてください。

オーストラリアメルボルン大学大学院で教育学とウィメンズヘルスを学びました。その時英語の論文を多く読み、最新の知識を得られることに大きな喜びを感じました。またその中からまだ研究されていない小さなギャップを見つけ出すことの楽しさも学びました。大学院が修了してしまうことで学びが継続できないことに寂しさを感じました。私は学ぶことや研究が好きなのだと思います。そこで教育・研究に携わっていきたいと思いました。

Q10. ご自身の研究者としての「強み」は何だと思いますか? また研究者としての弱みはありますか?

まだ研究者になったばかりで、一人で研究は何もできません。これは私の弱みです。そのことは十分理解しています。しかし、私の周りには私を導いてくれ、指導し、励ましてくれる恩師や先輩方がたくさんいます。いつもいつも助けてもらってばかりです。それを考えると研究を学べ、続けられる環境があり私は恵まれていると感じています。このように私を助け支えてくれる人たちに囲まれ研究できることが私の強みだと思います。

最後に

Q11. エディテージ・エッジWebサイトをご覧になる若手研究者、研究者を目指す学生さんへメッセージをお願いします。

研究を続けていく上で、辛いときもありますが、それよりも結果が導き出されるときはそれ以上に嬉しいです。研究を一緒にできる仲間や先輩、恩師との出会いも一生の宝物だと思っています。是非頑張ってください!!